ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2014.7.4 15:24

腹黒妄想

 

この間の東京都議会でのヤジに続き、

今度は衆議院総務委員会でヤジがあったという。

自民党の大西英男衆院議員が、

維新の会の上西小百合衆院議員に対して

「子供を産まないとダメだ」と

言ったとか。

 

うんざりだ。

また中身スッカスカの男が一人。

もっとも、こんなものは氷山の一角で、

今回は都議会の一件があったから

注目されたにすぎない。

何十年も前から、社会に出た女は、

多かれ少なかれ似たような経験を

誰もが持っている。

 

声を荒らげて抗弁したところで、

ヒステリーが始まったと

蔑まれるだけ、という諦観。

 

ところでヒステリーといえば、女だと

相場が決まっているようなイメージが

あるけど、兵庫県議の号泣会見、何だありゃ?

もしあの人が女だったら、

「あんなヒステリックに・・・これだから女は」と、

スッカスカの男性陣はしたり顔で

言っていたに違いない。

議員である前に女であることが

まず取り沙汰されるだろう。

しかし今、女は、「これだから男は」と

言っているだろうか。

 

その違い、なんだろうな。

無意識の差別感情というのは。

 

私は都議会の一件があって以来、

想像力のかけらもない男性陣に

何とかしてわからせる方法は

ないだろうかと、いろいろ腹黒い考えを

巡らせてきた。

 

自分ではどうしようもない、

持って生まれた性によって

見下される理不尽さ、悲しさ。

 

蔑まれる「女」という言葉を、

単に「男」という言葉に置き換えても

説得力もリアリティもない。

男に「早く結婚しろ」などと言っても、

悲憤慷慨するほどの感情が

湧きおこるとは思えないからだ。

 

自分ではどうしようもない、

という一点において有効なのは、

たとえば「加齢臭」。

ホルモンがどうたらこうたらで、

女性よりも圧倒的に男性のほうが臭う。

娘に「くさッ」とか言われて

落ち込んでいる男性なら、いそうだ。

しかも、もはや体質みたいなものだから、

自分で消そうと思ってもなかなか消えない。

香水をふりかけたところで、

それはそれでクサい。

しかも臭いは、自分の実力とは

本来、関係がない。

 

議会で発言すると、男は周りからこう言われるのだ。


「まず自分の臭いを取ったほうがいいんじゃないのか」


「取れないのか?」

 

あるいは職場でも、

「これだから加齢臭のする奴は」

なんて言われたりする。

「臭いの前に、僕の実力を見てください!」

と切実に訴えるも、

「あーはいはい、それは臭いを取ってからね」

と、適当にあしらわれて終わり。

真面目な人であればあるほど、

仕事で成果を出そうと思って空回り。

あるいはサプリなどで体質改善を試みるも、

自分自身、もはや強迫観念のように

臭いが気になっていく。

またヤジを飛ばされるのではないかと思うと

つい委縮して発言さえできなくなってしまう・・・。

するとますます周りから言われる。


「これだから臭う奴はダメなんだ」

 

へ・・・へへへ・・・

 

腹黒妄想がどんどん膨らんでいってしまう。

 

今まさに加齢臭で悩んでいるおじ様方、

これから自分もクサくなるかもしれないと

恐怖におののいているお兄様方、

いかがでしょう。

これなら女の抱える理不尽さが、少しは

わかっていただけるのではないでしょうか。


どうかな。
ダメかな?

 

今まさに加齢臭で悩んでいる方、
他意はありませんので。念のため。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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